この度、表現学会の代表理事を拝命致しました藤井俊博です。私は三十代になって職を得、この学会にすぐに入会致しました。私の性格は少々内向的な面がありますが、他の学会にない独特の温かな会の雰囲気に、入会後すぐに溶け込むことができました。入会してすぐに大会の司会を仰せつかったのには少々びっくりもしましたが、若手を育てることを企図した先輩の先生方の暖かい心遣いであったと思います。
表現学会は、どんな学会かと聞かれたら、若手にも垣根が低く親しみやすい学会とお答えします。では、数ある人文系の学会の中ではどんな役割を果たす学会でしょう。表現学会は、日本語学、英語学、言語学、日本文学、国語教育学、日本語教育学、修辞学、文章・談話など様々な学問分野を内包する学際的な学会です。まさに表現学会は言語を扱う学会の橋渡しとなる存在です。一方、内包している諸分野の側から見れば、表現学は各分野の中の応用的な領域であるようなイメージをもたれる向きもあろうと思います。確かに多くの関連分野の知見を駆使して問題解決していく点ではまさに「言葉の応用学」です。しかし、多分野の研究者が議論を進める中で、各分野の中で「常識」とされていることにも見直すべき点があることに気づく場合があります。各分野の研究者が刺激し合い、自らの常識を別の角度から見直す機会を提供できるとすれば、「言葉の基礎学」としての側面もあると思います。各分野の立場から表現のありようを究め、同時に、各分野の枠組みとなる知見を刺激していく、そのような意味での橋渡し的な存在であることができたらというのが私の願いです。微力ながら会の発展に力を尽くしたいと思っております。
令和3年6月
表現学会 代表理事 藤井俊博
令和5・6年度役員(敬称略、代表理事・事務局長・編集委員は専門分野を記載)
湊吉正
中島一裕
半沢幹一
藤井俊博 :日本語学
安井寿枝 :日本語学
柳澤浩哉 :修辞学 日本語学
石出靖雄 :日本語学
梅林博人 :日本語学
小田勝 :日本語学
小林一貴 :国語教育学
須田義治 :日本語学
鷲見幸美 :認知言語学
髙﨑みどり :日本語学
中里理子 :日本語学
西尾元伸 :日本近代文学
西田隆政 :日本語学
西山秀人 :日本古典文学
橋本行洋 :日本語学
長谷部陽一郎:認知言語学
湯浅千映子 :日本語教育学
湯浅千映子
菊地礼
松浦光
髙﨑みどり
中里理子
第一条 本会は表現学会と称する。
第二条 本会は言語表現に関する研究を推進し、研究者相互の連絡をはかることを目的とする。
第三条 本会はつぎの諸事業を行う。
一 研究会、講演会の開催。
二 会誌『表現研究』の発行。
三 その他必要な事業。
第四条
本会の趣旨に賛同し入会を希望するものを会員とする。
(但し会員一名以上の推薦を要する。)
会員は通常会員、維持会員、学生会員の三種とし、通常会員は年額 6,000円、維持会員は年額 10,000円、学生会員は年額 3,000円を納入するものとする。
会員は会誌の配布をうけ、研究会、講演会、その他の事業に参加することができる。
第五条 本会に以下の役員を置く。
一 代表理事 一名
二 顧問 若干名
三 理事 必要数
四 事務局長 一名
五 会計監査 二名
代表理事は会を代表し、会務を掌握する。
顧問は代表理事からの諮問に応じる。
理事、事務局長は理事会を構成し、本会の運営にあたる。
事務局長は経理を含む事務を行う。
会計監査は会計の監査にあたる。
理事および会計監査は総会で選出する。
代表理事は理事の互選による。顧問、事務局長は代表理事が委嘱する。
役員の任期は二年とする。但し重任を妨げない。
第六条 総会は年一回、代表理事が招集する。
第七条 本会に以下の委員会を置く。
一 運営委員会
二 編集委員会
三 広報委員会
各委員長、各委員は代表理事が委嘱する。
委員の任期は二年とする。但し重任を妨げない。
第八条 本会の経費は、会費、寄付金、その他の収入をもってこれにあてる。
会計年度は毎年4月1日より翌年3月31日に終る。
第九条 本会会則の変更は、理事会の決定によって、総会の議決を経なければならない。
付則 本会則は、昭和38年12月1日より施行する。
付則 昭和62年5月22日総会の議決によって一部修正。
付則 平成7年6月3日総会の議決によって一部修正、平成8年8月8日より施行。
付則 平成14年6月2日総会の議決によって一部修正、同日より施行。
付則 平成15年6月8日総会の議決によって一部修正、同日より施行。
付則 平成19年6月3日総会の議決によって一部修正、平成20年4月1日より施行。
付則 令和6年6月8日総会の議決によって改定、同日より施行。
(目的)
第一条 この規則は、会則第四条に定める会費の納入について定めるとともに、納入の遅滞や不納があった場合等の措置について定めるものである。
(会費の年額)
第二条 会費の年額は、会則第四の規定による。ただし、顧問からは学会費を徴収しない。
2 (学生会員会費) 学生会員は、学部学生・大学院生・研究生などの学籍を現に有する者とする。この適用を受けるためには、新規の入会時及び各年度の会費納入時に、そのつどの学籍を証明する書類(学生証・在学証明書等。その写しを含む)を郵送・電子的送付などにより、学会に提示しなければならない。
(会費の納入)
第三条 会費の納入は以下の通りとし、会員は会費の納入に遅滞が生じないように努めるものとする。
2 新たに会員になろうとする者は、会則第四条に定める入会手続きを行うとともに、同時に会費を納入するものとする。
3 引き続き会員である者は、毎年度7月末日までに遅滞なく会費を納入すること。
4 納入方法は、学会から機関誌、ホームページ等で周知するところによる。
(会費未納者への対応)
第四条 会費納入の通知や督促にもかかわらず、会計年度末(3月末)までに当該年度と前年度の2年分の会費が未納である会員は、同日付で退会扱いとする。
2 機関誌への投稿、研究発表会での発表および会員のために行う事業への参加の申し込みに際して、当該年度までの会費が未納の場合は、これらの申し込みを受け付けない。また、会員でない者が投稿・発表および会員のための事業への参加を申し込む際、同時に入会手続きと会費納入がなされた場合は、これを受け付けるものとする。
3 本条第1項により退会扱いとした場合、次年度刊行分からの機関誌の配布を停止する。
4 会費未納者について、前3項以外に措置が必要になったときは、理事会及び運営委員会で対応するものとする。
(退会に際しての会費の扱い)
第五条 会員が退会を申し出る場合、当該年度分までの会費を納入していなければならない。また、年度途中で退会する場合、すでに納入されていた当該年度分までの会費は、これを返還しないものとする。
付則 この規則は、平成28年6月4日から施行する。ただし、従来の規則によってすでに学生会員である者は、平成28年度末まで学生会員を継続することができるものとし、平成29年度以降は、この規則によるものとする。
わたくしたちは,つねづね,ことばによる表現の微妙なはたらきに感動し,それにひきつけられ,その醍醐味を味わっています。けれども,なぜそうなのだろうかという反省は,必ずしも徹底してはいませんでした。従来は多分にその体験を個個の表現効果の分析で解明しようとしていました。表現全体の問題として,それを考察の対象にするような動きは,あまりみられなかったように思います。ところが,ここ数年来,表現の問題は深くほりさげられるようになりました。表現を考察する機運が熟してきたのだと,判断することができましょう。そこでわたくしたちは,さらに一歩をすすめて,表現学の樹立をめざして学会を設立しました。表現の機構を体系づけ,表現の理論を確立する学問を,みんなの協力によってきりひらこうとするのが目的です。語学的な考えの方も,文芸学的な考えの方も,哲学的な考えの方も,心理学的な考えの方も,それから外国語畑の方も,ともに参加していただきたいと考えております。いろいろの分野からの検討が必要だからです。このさい,あなたもこの学会にご入会くださいませんか。会則および現在の会員名簿を別紙として添えました。よろしく。
昭和39年2月
表現学会 代表理事 真下三郎
これは表現学会の発足当時,入会をすすめる目的で,各方面に配布したものの写しです。学会設立の趣旨が述べてあり,これでわたくしたちの意図は十分に伝え得るものと確信しますから,毎号,これだけは転載しておきたいと考えています。それに,この文章は,ひとりの手になったものではありません。原案を,発起人全部が目を通して,それぞれに意見をのべ,修正を加えて,できあがったものだから,なおさら大事です。「初心忘るベからず」の意味においても,つねにこれをふりかえることは,有意義だろうと思います。
もちろん,だからといって,この文章が,入会のすすめの役割を,現在,放棄しているわけではありません。わたくしたち会員は,この趣旨をおし進めてゆく義務と責任をもっています。それは「重い荷持」です。それ故,この文章を,その重責に対し,つねに自己反省する資料となすわけですが,それは内部のこと,もしも外部のかたで,この趣旨にご賛成なら,この事業にご参加くださることを希望します。各方面のかたがたのご協力が必要だからです。このことは将来においても,かわりません。よろしく。
表現学会は、昭和58年で20年目を迎えました。思えば、昭和38年12月1日、名古屋で発起人会を開き、会則を協議してそれを可決、そのままそれを創立総会として、学会が発足しました。その間の事情は、この雑誌『表現研究』創刊号にくわしく書かれています。
ところで、このページに今までは「入会のすすめ」を再録して、その解説を掲げていましたが、その段階は、もうとっくに終了していると思われますので、それを止めます。その代り、その期間中に学会が視野に入れていた学問の対象分野について触れておきたいと思います。もちろんそのためには、『表現研究』全号に載る論文の内容を検討すれば万全なのですが、それをしないでも、思いのほかに明瞭となるのは、昭和51年5月に刊行された『表現学論考』の目次です。それは十の柱から成り立っています。多くの会員は、それを分担し合う意味で、執筆しました。この目次に表現学全体の射程が、視野が反映しているとみていいでしょう。それは次の通りです。
ここの表現とは、いわゆる expression をさすだけでなく、formation も含めていると思ってください。
なお、上記の項目とクロスさせて、次のようなテーマも、頭脳の隅のどこかに引っ掛けておいてよいのではありますまいか。
この記事は、当分の間、「入会のすすめ」のときと同様に、毎号ここに転載しておきたいと思います。ご了承下さい。
昭和58年3月
本学会は、表現学すなわち表現の機構を体系づけ、表現の理論を確立する学問を開拓・樹立することを目的として、昭和38年(1963)に設立されました。以来、会則の第二条に「本会は言語表現に関する研究を促進」すると謳ってあるように、表現の中でもとくに言語表現を対象として、日本語に限らず他言語についても、また語学・文学・心理学・哲学・教育学などさまざまな分野にわたって、活発な研究が行われてきました。その成果は、おもに年1回開催の全国大会や年2回発行の機関誌『表現研究』において公開されてきました。
近年は、学問分野が細分化される傾向にあり、それらを横断するあるいは相関させる視点の必要性が強まってきました。また、国際化・情報化の進展にともない、広義でのコミュニケーションの技術・方法の開発が求められるようになってきました。これらはつまり、言語を中心媒介とした受容・理解を含めた表現の原理・機構を総合的にとらえることの重要性が改めて認識されるようになったということであると考えられます。その意味で、本学会の存在価値はますます高くなっていると言えます。
実際に表現の学として、本学会がこれまで取り組んできた研究の射程・視野をまとめてみるならば、次のようなものがあげられます。
(1)言語-表現の基底としての言語の論
(2)視点-表現の機能としての視点の論
(3)文芸-表現の味わいとしての文芸の論
(4)認識-認識の型としての表現の論
(5)意味-表現のささえとしての意味の論
(6)文章表現法-文章の構造と叙述方法の論
(7)文体-表現のすがたとしての文体の論
(8) 解釈-表現過程の再構成としての解釈の論
(9)文章史-文章の成立の史的考察およびその方法の論
(10)表現論史-表現についての論説の史的考察およびその方法の論
もとより、本学会のめざすところが以上に限定されるわけではなく、今後、時代や社会の要請をふまえて、表現学としての射程は拡大・展開されていくことでしょうし、それに応じた新しい理論が生まれることでしょう。ただ、変わらないのは、あくまでも言語表現を基盤として、それに関わる人間のさまざまな営為をとらえるという立場です。この一点に関して関心を抱くすべての方々に、専門や立場の違いを越えて幅広く、本学会に入会されるようおすすめします。
以上
全3巻(2013年6月刊行) 表現学会編
表現学会員・表現学会関係者は2割引です。その旨を清文堂出版にお伝えください。
50周年を記念してまとめられた資料をダウンロードできるようにしました。
資料の作成者は、半沢幹一氏です。Webサイト掲載用に提供していただきました。
本学会は、日本学術会議協力学術研究団体の指定を受けています。
表現学会メールマガジン第4号(2024年12月)(PDFを表示します)
学会が生まれるプロセスには二つの形があると思う。一つは、新しい研究分野が開拓されて、 その分野に対応する学会が必要になって生まれるパターン。もう一つは、「新しい学問領域が必 要だ」と考える研究者が集まって、まだ存在しない学問領域を生み出すために作られるパターン である。
ほとんどの学会は前者であるが、表現学を構想して生まれた本学会は後者に当たる。(『表現研 究』表紙裏に毎号掲載される「入会のすすめ」を参照。)ちなみに、本学会以外ではウェルビーイ ング学会(2021年設立)などが後者の例だと思う。
後者の学会が少ない理由は容易に想像できる。「新しい学問領域を作る」というのは壮大な夢 だからである。夢を共有して学会を立ち上げること、夢を継承していくこと、どちらの大変さも想 像に難くない。表現学会が60年以上存続しているのは、一つの奇跡かもしれない。
本学会の美点の一つは「会員を育てる文化」である。他の学会にはなかなか見られない稀有な 文化だと思うが、本学会の設立目的を知ると、そこから必然的に生まれる文化なのだと納得でき る。この文化は例えば、『表現研究』投稿者への非常に丁寧な査読コメントに現れている。
『表現研究』に投稿し、本学会の文化を実感いただく会員が増えることを願ってやまない。
柳澤浩哉(広島大学)
「表現学会なら受け入れてもらえるかな。」「表現学会しか受け入れてくれないよね。」これは事務局長在任中、学会内外の様々な方から度々伝えられた言葉である。研究テーマ然り、研究者としてのスタンス然り、表現学会が懐の深い学会であることを物語っている。学会組織が蛸壺化し乱立する昨今、「表現」という緩やかな共通性のもと、多彩な領域の学徒が集い、温かい雰囲気の中で闊達な議論を行うこの学会の存在意義は大きい。
さて設立から60年余り、表現学会では実に様々な(各々の確かな専門性に裏付けられた)表現「論」が蓄積されてきた。(今後のリレー・メッセージでも、数々の魅力的な「私の表現論」に触れられるだろう。)この学会が次のステージに確実に進むため、「論」の集積を、表現「学」として体系化させる道筋が肝要だろう。当然、既存の学問領域や学会の「亜種」であってはならない。そして(疑似的な知能や、それが生み出す言語「的」なものも重要だろうが、それ以上に)社会を生きるリアルな「人間」と、人間が創造するリアルな「表現」との直接的な結び付きの在り方こそを探求する、「人文学」としての気概は、この学会が生き残り、進化し続ける上で重要な道標かもしれない。
私自身、学会の末席に名を連ねる一人として、微力ではあるが地味に地道に、その道のりを歩み続けたい。
野田大志(愛知学院大学)
1999年の秋頃、今は亡き藤田保幸氏から電話で「表現学会の近畿例会で口頭発表しないか」と誘われました。
少し戸惑いましたが「ぜひ」と承諾すると、「ついては、会員でないと発表できないから、(会費を払って)入会してくれ」とのこと……。
で、「表現学会」がどのような学会であるのか知らないまま入会し、2000年1月8日の第6回近畿例会において口頭発表したのが、私の“表現学会デビュー”でした。
その後も表現学会について調べようともせず、ただ例会や時には大会にも気の向くままに参加していたのですが、そんないい加減な会員であるにもかかわらず、皆さん優しく接してくださり、まさに前号で藤井代表理事が述べていた通り、フレンドリーな会であることが実感されました。
そんな私が前期(2021年度)から委員を仰せつかることになり、学会誌の編集(の一部)に携わることになりました。
いざ編集委員会に出席してみると皆さん厳正で、投稿論文に対して時に手厳しい評価も下されました。
このように、親しみやすさと厳格さがうまく共存しているのが表現学会の良いところだと思います。
表現学会では若い方々の活躍も多く見られ、将来を楽しみにしています。
橋本行洋(花園大学)
皆さん、こんにちは。この度、会員の皆さんが相互に交流を深める場として新たにメールマガジンを始めることになりました。このリレー・メッセージの欄は毎回交代で会員の皆さんの近況や学会について思うところを発信していただく欄です。
表現学会の魅力は、会員間のフレンドリーな意見交換が行われる点にあると思います。他の人の独特の考えや感じ方に接することは、自分の発想も豊かにしてくれます。会員の皆さんが、日頃どんなことを考えて日々研究生活を送っているのか、私も興味津々です。是非、日頃考えたり感じたりしているところを「後続ランナー」の方に披露願えたらと思います。
今年は神奈川大学で久しぶりに対面での大会が控えています。皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。
代表理事・藤井俊博先生